滋賀県の県庁所在地はなぜ大津?草津・彦根との違いと歴史の真相
日本最大の湖・琵琶湖を抱え、豊かな自然と関西屈指の交通利便性を誇る滋賀県。しかし、全国の地理クイズや学校のテスト、あるいは他府県から訪れる旅行者の間で、長年繰り返されてきた定番の疑問があります。「滋賀県の県庁所在地はどこだっけ? 商業で栄える草津? それとも国宝の城がある彦根?」という迷いです。
正解は「大津市」です。ただ、地図を広げてみると、大津市は滋賀県の南西の端、目と鼻の先に京都府との境界線を控える極端な位置にあります。なぜ県の中央部ではなく、京都に隣接した西の端に県政の中枢が置かれたのでしょうか。そこには、明治維新の廃藩置県から続く激動の統廃合ドラマと、琵琶湖の水運が握っていた交通の要衝としての必然性がありました。2026年現在の最新都市データや現地取材の声を交えながら、その決定的な理由と知られざる歴史の深層を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:滋賀県の県庁所在地は「大津市」。県庁舎(登録有形文化財)はJR大津駅から徒歩8分、京都駅からも新快速でわずか9分という近畿屈指の立地にある。
- 要点2:草津市や彦根市と混同されやすい理由は、草津の急速な経済発展と彦根の歴史的知名度にあるが、人口・行政機能ともに現在も大津市が県内第1位を維持している。
- 要点3:大津に県庁が置かれた決め手は、明治初期の「大津県」と「犬上県(彦根)」の合併劇、そして古来より京都・大坂と東国を結ぶ水陸交通の最大拠点だった地理的優位性にある。
【結論】滋賀県の県庁所在地は大津市|なぜ「草津や彦根」と勘違いされるのか?
滋賀県の県庁所在地を問われた際、即座に「大津市」と答えられる人がいる一方で、「草津市」や「彦根市」を思い浮かべる人が後を絶ちません。この混同が起きる背景には、各都市が持つ突出した個性と、県内における明確な役割分担があります。
まず「草津市」と間違われやすい最大の理由は、近年のめざましい経済成長と商業の集積です。草津駅周辺はJR琵琶湖線と草津線が交差する交通の要衝であり、大型商業施設やタワーマンションが林立しています。立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)を擁する学生街としての活気もあり、「滋賀県で最も勢いのある都会」という印象が強烈に刷り込まれているためです。
一方の「彦根市」は、歴史的な知名度と圧倒的なブランド力が原因です。江戸時代、譜代大名の筆頭であった井伊家35万石の城下町として栄え、国宝・彦根城やマスコットキャラクターの先駆けとなった「ひこにゃん」の存在感は全国区です。「歴史ある主要都市=県庁所在地」という連想が働き、彦根を県庁所在地だと記憶違いしてしまうケースが目立ちます。
しかし、行政の中心地は一貫して大津市です。大津市は天智天皇が「近江大津宮」を拓いた古代からの古都であり、現在も滋賀県の人口トップ(約34万人)を誇る中核市として、名実ともに滋賀県の首府であり続けています。

【データ比較】大津・草津・彦根の主要指標と機能の徹底比較
滋賀県内の主要都市がどのような役割を担っているのか、客観的な統計指標と現場の機能から比較検証してみましょう。公式発表資料および2026年の自治体統計データに基づく比較は以下の通りです。
| 都市名 | 推計人口・規模 | 都市の主機能・特徴 | 京都駅へのアクセス(JR) |
|---|---|---|---|
| 大津市 (県庁所在地) | 約34万2,000人 (県内1位・中核市) | 滋賀県庁、県警本部、合同庁舎が集まる行政・司法の中枢。琵琶湖観光の玄関口。 | 新快速で約9分 (快速・普通でも約10分) |
| 草津市 | 約14万5,000人 (県内2位・増加傾向) | 駅前再開発が進む経済・商業・学術の中心。若年層の人口流入が顕著。 | 新快速で約17分 |
| 彦根市 | 約11万0,000人 (湖東地域の中心) | 国宝・彦根城を核とする歴史・伝統文化・観光の中枢。滋賀大学などの学術拠点。 | 新快速で約47分 |
| 長浜市 | 約11万2,000人 (湖北地域の中心) | 黒壁スクエアなどで知られる湖北の商工・観光拠点。豊臣秀吉ゆかりの城下町。 | 新快速で約1時間10分 |
データを見れば明らかなように、人口規模において大津市は草津市の2倍以上を有しており、県内最大の都市としての地位は揺らいでいません。大津が行政の中枢、草津が商業・経済の牽引役、彦根・長浜が歴史文化と地域拠点を担うという、絶妙なバランスで県全体の機能が分散・協調していることが分かります。
なぜ大津なのか?廃藩置県と「大津県・犬上県」が辿った激動の歴史
では、なぜ滋賀県の県庁所在地は、県域の真ん中ではなく西端の大津に置かれたのでしょうか。その答えは、明治初期に断行された「廃藩置県」の統廃合劇と、近代以前の「琵琶湖水運」の物流ルートにあります。
一度は「彦根」に県庁が置かれかけた?大津県と犬上県の合併
1871年(明治4年)の廃藩置県直後、現在の滋賀県エリアには膳所県、彦根県、宮川県など多数の小県が乱立していました。同年11月の第1次府県統合により、近江国(現在の滋賀県)は大きく南北の2つに再編されます。
南部を中心とする「大津県」(県庁は大津)と、北部を中心とする「犬上県(いぬがみけん)」(県庁は彦根)です。
翌1872年(明治5年)1月、大津県は県庁の所在地郡名にちなんで「滋賀県」へと改称されます。そして同年9月、政府の財政効率化と統治強化の方針により、犬上県が滋賀県へと編入合併され、現在の滋賀県全域が一つにまとまりました。
この合併協議の際、実は「県庁を旧犬上県の中心である彦根に置くべきか、それとも旧大津県の中心である大津に置くべきか」という激しい綱引きが存在しました。彦根は旧幕府時代に圧倒的な威容を誇った井伊家の城下町であり、人口や都市インフラの集積度では大津を凌ぐ勢いがあったからです。しかし、明治政府の裁定は大津の採用でした。
京都に近すぎることが「最大の強み」だった時代背景
大津が選ばれた決定的な要因は、中央政府や京都・大阪との政治・物流連絡路としての圧倒的な優位性です。
当時はまだ東海道本線の鉄道が開通しておらず、人や物資の輸送は水運が主役でした。日本海側や北陸から運ばれてきた物資は、敦賀から陸路を経て琵琶湖の北端(塩津や今津)に入り、そこから琵琶湖の蒸気船・帆船に乗って南端の大津港へと集結していました。そして大津から逢坂山を越えて京都、淀川を下って大坂へと送られていたのです。
つまり大津は、「滋賀県の端っこ」ではなく、「琵琶湖全体の物資が最後に吸い上げられるメガターミナル」でした。京都・大阪の政財界と直結し、中央の通達を迅速に受け取り県内全域へ号令を発するためには、大津以上に適した場所は存在しなかったのです。

【現場検証】国登録有形文化財の滋賀県庁舎と最寄り駅のリアルな利用事情
滋賀県政の心臓部である県庁舎は、歴史的建築物としての価値と、ユニークな業務環境を持っています。現地取材と公的データから、その実態を掘り下げます。
🏢 滋賀県庁 本庁舎 概要データ
- 所在地:〒520-8577 滋賀県大津市京町四丁目1番1号
- 総合案内電話:077-528-3993
- 開庁時間:平日 8:30〜17:15(土日祝日・年末年始を除く)
- 最寄り駅:JR琵琶湖線(東海道本線)「大津駅」北口より徒歩約8分/京阪電鉄石山坂本線「島ノ関駅」より徒歩約5分/京阪京津線「びわ湖浜大津駅」より徒歩約10分
昭和初期の威厳を今に伝える「本館」の美しさ
現在使用されている滋賀県庁本館は、1939年(昭和14年)に竣工した鉄筋コンクリート造4階建ての近代建築です。設計は国会議事堂の設計にも関与した大蔵省営繕管財局技師の城戸久らが手がけ、近世ゴシック調の重厚な外観と昭和モダンな意匠が融合しています。その歴史的・建築的価値が高く評価され、2014年には国の登録有形文化財に登録されました。
実際に庁舎を訪れると、正面玄関の重厚な車寄せや大理石が敷き詰められた中央階段、知事室周辺の格調高いレトロなディテールが、訪れる人々を圧倒します。映画やテレビドラマのロケ地としても頻繁に活用されており、公務を司る現役の行政施設でありながら、生きた文化財としての側面も色濃く残しています。
また、滋賀県庁ならではの特徴的な組織として知られるのが「琵琶湖環境部」です。面積の約6分の1を琵琶湖が占める自治体として、水質保全や外来種対策、水源の森林保護を一手に担う専門部局が設置されており、県庁舎内でも環境政策に関する発信が目立ちます。2026年現在も「マザーレイクゴールズ(MLGs)」を掲げ、環境先進県としての取り組みを強力に推進しています。
現場職員と県民が語る「大津駅アクセスのリアル」
滋賀県庁へのアクセスについて、日常的に利用する県職員や来庁者の声を聞くと、利便性の高さと地域格差の両面が浮かび上がります。
「JR大津駅から平坦な道を歩いて8分ほど。京都方面から通う職員や出張者にとっては、京都駅から新快速で1駅9分なので抜群に通いやすいです」(県庁勤務・40代職員)
一方で、湖東や湖北(米原市や長浜市など)に住む住民からは、違った視点の声も聞かれます。
「仕事で県庁に行く際は、新快速に乗れば長浜からでも1時間強で着くので交通自体は悪くありません。ただ、県庁のすぐ先がもう京都府山科区だと考えると、『自分たちの県政の中心がこんなに遠く、京都の隣にあるのか』と心理的な距離感を感じることはありますね」(長浜市在住・50代自営業)
この「京都に近すぎる利便性」と「県北・県東からの心理的距離」の二面性こそ、滋賀県庁の立地が抱え続けてきた構造的特徴です。
一般に知られていない盲点|「滋賀県庁の移転計画」の真相
あまり広く知られていませんが、滋賀県庁を大津から県の中央部へ移転させようとする「県庁移転論」は、過去に幾度となく議論されてきました。
なぜ移転議論が巻き起こったのか?
移転論が活発化したピークは、昭和後期から平成初期にかけての高度経済成長期からバブル期にかけてです。主な理由は以下の3点でした。
- 県土の均衡ある発展:大津市が南西に偏りすぎているため、湖東(近江八幡市や能登川など)の地理的中心部に移すべきではないかという地域代表議員からの強い要請。
- 庁舎の狭隘化(きょうあいか):行政需要の増大に伴い本庁舎だけでは手狭になり、複数の別館に機能が分散していたこと。
- 草津市の台頭:経済の中心地として急成長した草津市周辺を新たな新都心として位置付ける構想。
移転が白紙になった「現実的な壁」
しかし、最終的に滋賀県庁の移転計画が実現することはありませんでした。最大のハードルとなったのは数千億円規模に上る巨額の移転新築コストです。バブル崩壊後の財政難に直面する中で、新庁舎の建設は県民の合意を得ることが困難でした。
さらに決定打となったのが、交通インフラの劇的な進化です。JR琵琶湖線の新快速網の拡充と増発、名神高速道路や新名神高速道路の整備により、県内各地から大津までの移動時間が大幅に短縮されました。物理的に県庁を動かさなくても、移動の時間距離が縮まったことで移転の必然性が薄れていったのです。
加えて、2009年に滋賀県は行財政改革の一環として、各地域に分散していた地域振興局(出先機関)を再編・集約し、デジタル化による行政手続きの簡素化を推進しました。こうして「大津を中枢としつつ、オンラインと広域交通で県全域を結ぶ」という現在のスタイルが定着したのです。

【中学受験・テスト対策】もう絶対に迷わない!滋賀県の県庁所在地の確実な覚え方
小学校の社会科や中学受験の地理分野において、滋賀県は「県名と県庁所在地名が異なる都道府県」の代表格として頻出します。「滋賀市」という自治体は実在しないため、うっかり県名をそのまま書いて失点する受験生が後を絶ちません。
絶対に忘れないための記憶定着テクニックと、親子で覚えられる語呂合わせを紹介します。
視覚イメージで覚える!鉄板の語呂合わせ
暗記を確実にするコツは、琵琶湖の「水」のイメージと「大津(大きな港)」という漢字の意味を紐付けることです。
💡 受験生に効く暗記フレーズ集
- 「琵琶湖の真ん中に浮かぶ、大きな津(港)= 大津」
※「津」という漢字は「船着き場・港」を意味します。琵琶湖の水運の中心だった歴史的事実とリンクさせると一生忘れません。 - 「滋賀の琵琶湖でおおはしゃぎ、津波(つなみ)は出ないが大津市だ」
※淡水湖なので津波はありませんが、コミカルなリズムで「大津」を印象づける語呂合わせです。 - 「京都の隣の大きな港、大津でシガ(滋賀)みつく」
※京都駅のすぐ隣という地理的位置関係と、滋賀県をセットで頭に叩き込むフレーズです。
中学入試の地理記述問題では、「大津市が県庁所在地として発展した理由」を問われることもあります。その際は「琵琶湖水運の終点であり、京都・大阪へ物資を運ぶ陸路との結節点として古くから交通の要所であったため」と記述できるよう準備しておけば、ライバルに差をつけることができます。
【プロの結論】都市構造と境界線から見出す滋賀県の地域バランス
都市地理学および地域社会学の視点から滋賀県を観察すると、大津市に県庁が置かれている構造は、単なる歴史の遺産にとどまらず、現代の滋賀県が持つ「二面性の強み」を象徴していることが分かります。
「京都・大阪のベッドタウン」と「母なる琵琶湖の自立圏」
大津市をはじめとする湖西・湖南エリアは、京都・大阪への圧倒的な通勤利便性を活かし、関西圏のベッドタウンとして人口を維持してきました。京都駅までわずか9分という近さは、他府県の県庁所在地と比較しても極めて異例の近接性です。
一方で、県庁が大津にあるからといって、滋賀県が京都の単なる衛星都市に埋没しなかったのは、「琵琶湖」という巨大な共有アイデンティティが存在したからです。琵琶湖の環境を守るための独自の条例(滋賀県琵琶湖富栄養化防止条例など)を全国に先駆けて制定するなど、滋賀県政は独自の自立路線を歩んできました。大津に県庁を置くことで、畿内大都市圏のトレンドや政策スピードをいち早く吸収しつつ、背後に広がる広大な琵琶湖水系と農水産業・先端産業を守るという、絶妙な「心理的・物理的バウンダリー(境界線)」を維持してきたと言えます。
滋賀県内で住まい・移住を検討する際の判断基準
県庁所在地の大津市、経済都市の草津市、歴史都市の彦根市は、それぞれ住環境や向いている層が大きく異なります。生活者目線での選択基準をまとめました。
- 大津市が向いている人:京都・大阪へ頻繁に通勤・通学する人。静穏な住環境と琵琶湖畔の景観、公的行政機関の充実度を重視するファミリー層。
- 草津市が向いている人:駅前の商業施設や外食・ショッピングの利便性を最優先したい人。活気ある街並みや子育て支援策の充実を求める共働き世帯。
- 彦根市・長浜市が向いている人:歴史や伝統文化に囲まれた暮らしを好み、滋賀県独自の落ち着いた風土に深く根ざしたコミュニティで暮らしたい人。
【滋賀県の県庁所在地】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:滋賀県の県庁所在地はなぜ「滋賀市」ではないのですか?
A1:明治時代の廃藩置県において、大津県から「滋賀県」に改称された際、県庁が置かれた場所が当時の「滋賀郡大津橋本町」だったためです。都市名としては伝統的な「大津」という町名がそのまま引き継がれ、後に市制施行されて「大津市」となったため、「滋賀市」は誕生しませんでした。
Q2:大津市から京都駅までは電車でどれくらいかかりますか?
A2:JR東海道本線(琵琶湖線)の新快速を利用すると、大津駅から京都駅までは約9分で到着します。普通列車でも約10分であり、関西の主要都市間でも極めて短い所要時間で結ばれています。
Q3:草津市の方が栄えている印象ですが、人口は大津市とどちらが多いですか?
A3:人口規模は大津市の方が圧倒的に多いです。大津市の推計人口が約34万2,000人であるのに対し、草津市は約14万5,000人です。草津市は駅前の商業集積や人口増加率の高さから大都市に見えやすいですが、行政区域全体の面積や総人口では大津市が県内第1位を維持しています。
Q4:滋賀県庁の見学は一般の人でも可能ですか?
A4:本庁舎の共用部(県民サロンや文化財展示スペースなど)は、平日の開庁時間内(8:30〜17:15)であれば一般の見学が可能です。昭和初期の重厚な建築美やステンドグラス風の意匠など、登録有形文化財としての見どころが各所にあります。なお、知事室などの執務エリアは特別なイベントやツアー時を除き非公開となっています。
まとめ:歴史の必然で選ばれた大津市とこれからの滋賀県
滋賀県の県庁所在地が「大津市」である理由は、単なる偶然や名残ではありません。琵琶湖水運の結節点として畿内の大動脈を担った歴史的必然性と、廃藩置県における大津県・犬上県の統合ドラマ、そして京都・大阪と直結する圧倒的な地政学的メリットによって選ばれ、磨かれてきたものです。
草津市が経済を引っ張り、彦根市や長浜市が豊かな歴史文化を伝え、そして大津市が県政と琵琶湖環境の中枢として全体を束ねる――この多極的な都市構造こそが、滋賀県の独自の魅力と高い住みやすさを生み出しています。「滋賀の県庁所在地は大津、京都のすぐ隣の大きな港町」という歴史のストーリーとともに、ぜひその独自の街並みや文化財庁舎の魅力にも注目してみてください。 (出典: 滋賀 県 の 県庁 所在地(Yahoo!ニュース))